Keep paddling project第2章 EXPEDITION

2018/12/15 240km南西諸島、列島縦断に成功。

写真:川畑公平 / 撮影協力:kanaka沖縄

SNSムービー一覧

 実際に航海中に撮影、公開したSNSドキュメント集です。







-EXPEDITION-

奄美ー沖縄240km Foil&SUP island hopping

はじめに、

お陰様で、今年2018年にスタートしたKEEP PADDLING PROJECT、第一章、ハワイで開催されたマウイーモロカイ45km海峡横断レースへの12才の珠里は史上最年少で無事完漕に成功。その二週間後にはアメリカ本土コロンビア州で開催されたNaish Columbia Gorge Paddle Challenge世界選手権に出場し12-14才子供部門で優勝することができました。
年始から夏休みまで約半年間、休みなく酷使した体を休めるため、この秋2ヶ月間はリラックスし海遊びしながら再びエネルギーを蓄えました。外洋の波も久々のリーフサーフィンも、この秋は本当に良い波に恵まれとても充実した日々でした。また大型の台風24、25号と二度の緊急事態で周囲に被害も出るなか、必死に自宅を守りました。一週間の停電は不便でしたが、改めて海と暮らすということに対して覚悟の気持ちが持てるよい機会となりました。

 

「海を楽しむ=海楽」

 

と我々は良く口にします。ネットやゲーム、テレビドラマなど、世の中には楽なこと、楽しいことが満載ですから楽しみ方は人ぞれぞれ自由です。世間一般の”楽しみ”とはストレス解消の事かもしれません。

 

僕ら一家にとっての楽しみとは、当然囲まれた部屋の中でゲームに打ち込むことではありませんが、ただ漕ぐ、レースに出ることだけでもないのです。一つの目標に向かって、心底から真剣に直向きな努力を重ねる。その先に、それまでできなかったことが少しづつできるようになって、怖くて仕方なかった海が渡れるようになる。そんな達成感が僕ら親子の楽しみであり、喜びです。

 

家族の挑戦

”競技の海”から”冒険の海”へ、

将来モロカイチャレンジ、そしてオリンピックの頂点という偉大な夢を追う私たちがいつも大切にしていること。それは常に視野を広く、片方だけでなく様々な角度から物事を見る力を養うこと。そして、時に美しく、時に恐怖である地球環境へ崇高な想いで日々を暮らすという事。海の深さと怖さを知り畏敬の念を持ち備えてこそ、はじめて到達目標が見えてくると思っております。

5才でパドルを握った珠里は小学1年から国内SUPレース、4年生からは海外レースを転戦しこの5年間、スポーツと学業のかなり忙しい生活をおくってきました。光栄なことに世界最年少チャンピオンとして海外レースで『Shrimpy!!』とニックネームを呼んでくれる人たちも増え、平水も外洋もそれなりのスピードで競えるようになりました。サメに遭遇したり、幾度となく危険と向き合ってきましたので外洋の厳しさや楽しさは相当理解が深まりました。
しかし、まだまだ小学生。ランドセルを背負えば普通の子供と何も変わりません。海と陸が繋がっているということを肌で感じる機会は殆ど無く、そんな今だからこそ、このまま大人になる前に自分たちが暮らす島にどんな山が連なり、その上にはどんな雲がかかっているか?そして雲の後ろにどんな星が見えるのか?海と島、空と宇宙の繋がりをもっと感じてほしいと思います。

6年後、パリオリンピックの正式種目となるであろうと言われているSUP競技。これから本格的にプロアスリートを目指すにしても、もしくは進学するにしても、本物の海人になるために今やるべき事。それは観客やスポンサーバナー、様々な人工物に囲まれた海から、一切仕切りのない無限の海へ漕ぎ出すこと。全て野生のルールで裁かれるリアルな海へ出ることで、珠里本人そして私たち一家が追いかける夢を、これまでとは違う視点からあらためて見つめ直そうと考えました。

このような背景でKEEP PADDLINGプロジェクトは第1章M2M海峡横断(レース)から、第2章EXPEDITION(冒険)へと突入します。長年の海仲間が暮らす奄美大島の加計呂麻から、私たちの自宅がある沖縄県名護市安部まで240kmの海を、父と息子一緒に島から島へ、人力で海を渡ります。(アイランドホッピング)並走する伴走船に妻と1&5才の二人の妹たちも乗り冒険をサポートします。もちろん、父と一緒とはいえ小学生が240kmの海域を横断した事も縦断した事も、まだ前例のない大冒険です。

 

この時期の南西諸島は北寄りの風が吹き、海は極上のダウンウインドコンディションになります。島々の間は約20-30km、風向きは微妙に変化するので、天候と体力のバランスが成功の鍵となるでしょう。そして島での滞在はキャンプ生活です。南の島とはいえ冬ですから夜は冷えます、防寒対策も必須です。日頃の練習の成果を発揮してダイナミックな外洋サーフィンができるよう、心の底から冒険を楽しみ、安全第一で渡りたいと思います。

 

今回のExpeditionにはハワイの海峡横断レースに使用した14ft.SUP(スタンドアップパドルボード)に加え、新たにフォイルボードを使います。フォイルはボードの裏面に装着した飛行機型のフォイルで水面上に浮上し進むという、とてもユニークでスタイリッシュな近年では最新のオーシャンスポーツです。原理は飛行機の翼と同じで、浮上すると水の抵抗が減り通常のSUPより圧倒的な速度で海面移動します。冒険では、随時気象条件にあわせながらSUPとフォイルを使い分け、より安全に、そして迅速な列島縦断に努めます。

 

そして今回のExpeditionには食料やキャンプ装備を運んでくれる伴走船の存在は欠かせません。船長は父・汰久治の長年の友であり、荒木家が尊敬するウォーターマン・谷龍一郎氏が担当します。二人は2011年夏、沖縄〜奄美をインフレータブルSUPで単独北上、その翌2012年冬には奄美から沖縄までインフレータブルSUPで単独南下に成功した経歴があります。巻末ドキュメントをご覧いただければお分かりの通り、谷船長と荒木親子がそれぞれ長年培ってきた経験を共有し、互いが固い信頼関係で繋がっているからこそ、このような大冒険が実現できたと思います。

「海人としての子育て。」

どんな海に直面し、苦労を乗り越えていくのか?水平線の先に何が見えるのか?

私たちはより本質的な海暮らしを追求しながら子育てをしています。技術スキルや体力だけが優先することなく、心を鍛え、大自然の中で広い視野を持てる人間になってほしいと常々願っています。 

底が見えない外洋ですから、当然様々なリスクも背負います。陸も海も予想困難のハプニングは当然あるでしょう。100%安心・安全の世界など、この世にありません。「人と地球が共生する」とはそういう場所だと思います。地球へダメージが極力少ない、海を汚さない。SUP/フォイルというパドルスポーツで人力縦断するEXPEDITIONは、人と地球が平等で対等な関係。僕ら夫婦、そして親子が互いに自立し支え合う形もまた本当の意味での平等です。

 

前に広がる海は、世界と繋がる入口。勇気を出して漕ぎ出せばどれだけでも夢は広がり、仲間と繋がることができる。

 

家族全員でこれまで気付かなかった現実と、それを超越した美しい景色を見てきます。

 

Keep paddling.

 

荒木汰久治、園子、珠里、夏南風、ティアレ 

 

 


荒木珠里後援会 KEEP PADDLING PROJECT

第1章小学6年生で最初のステップ、マウイーモロカイ45kmレースに挑戦。


第2章競技から冒険へ。奄美大島〜沖縄本島240km冬の荒海を20日間かけてSUP/Foilで縦断。


第3章中学に入学した珠里が世界最高峰の海峡横断レースM2Oへ史上最年少13才で挑戦。